歌舞伎鑑賞日記!

コロナ禍に見舞われた去年も5回見に行ってしまったほど私は歌舞伎が好きなのですが、
緊急事態宣言が出たことで我慢しようという思いもあり、今年はまだ一度も見に行けておらず、そろそろ行きたい、、という気持ちが日々高まっている中、その気持ちをどうにか昇華させるためにも、ふと、過去に見た歌舞伎について記録を残しておこうと思い立ちました。

 

完全に趣味の世界、自己満足の世界ですが、歌舞伎を一度も見たことがない人にも少しでもイメージが伝わるよう、具体的に書いていきます。

 

取り上げるのは、12月に見た「戸崎四郎 補綴 四変化 弥生の花浅草祭」

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歌舞伎座の前には、公演中の演目をモチーフにした絵が張り出される



出演者については、出演者の1人が尾上松也(2020放送の半沢直樹にてベンチャー企業「スパイラル」社長役を演じた)という情報だけを知っている状態で、歌舞伎座に向かいました。

歌舞伎座への入場時には、手指消毒を促され、サーモグラフィーにより体温を測定されます。また細かいですが、以前はチケット半券を従業員が切り取っていたのを観客自身が切り取るオペに変えています。
また、歌舞伎は通常、一日の中で午前の部と午後の部(それぞれ3演目・計4時間くらい)の単位で客入れ・チケット販売を行なっていますが、コロナ禍以降は、一日の舞台を4単位に分け、1演目・1時間ごとに客入れ・チケット販売・客入れを行なっています。
午前の部・午後の部という分け方はもはやせず、一日に4演目公演している訳です。その分、チケットの単価は下がりお求めやすくなりました。
1演目ごとに、役者・スタッフのチームを完全に分け、そのチームの中で1人でも感染者が出たらその演目だけ休止するというルールにしており、1演目ごとに客も入れ替わるので、その度ごとに一斉に客席を消毒している様子もテレビで放送されていました。

今回の私の席は席は2階2扉5列15番。2階席ながら、花道(舞台向かって左端、舞台から一直線に伸びている、役者の入退場の一部に使われる通路)も見えてなかなか良い席です。もう一つのコロナ対策として、今の歌舞伎座では一個空きで席に座ります。例え連れの人がいる場合でも必ず一個空けて座るよう、席が指定されています。

観客にはどんな人が来ているの?という補足情報として書いておくと、私の左隣には、小綺麗な、グレーヘアの(50-60代と見られる)おじさまが座っていました。パンフレットも購入していたのでコアファンのようです。
前の列には、シニアな(こちらも50-60代と見られる)女性2人連れ。2人とも顔・雰囲気が似ていたので勝手な想像ですが姉妹といったところでしょうか。(耳に当てると副音声的に展開の解説をしてくれる)イヤホンガイドをつけているため、初めて歌舞伎を見に来られたような感じでしょうか。

と、こんな感じで少し周りの観客層を観察しているとブザーが鳴って暗転しいよいよ開幕です。舞台は真っ暗なままでも、開幕を告げる乾いた拍子木の音、続いて三味線の音ですぐに歌舞伎の世界へと引き込まれます。

暗転した中でも花道だけうっすらと灯りがついているため花道から役者が登場するのかしらと思いきや、舞台が一気に明転すると既に舞台には役者の姿が。舞台向かって下手側(左側)の、三味線・お囃子部隊、舞台中央に掲げられた美しい幕とその前に立つ役者2人が一気に視界に飛び込んできました。

2人のうち右側は、いかにも位の高そうな女性貴族、左側はそのお付きの人と思われる、赤ん坊を抱いた小柄な老人です。双眼鏡で役者の顔にクローズアップして、女性貴族の方が尾上松也であることを確認しました。半沢直樹の中での勇ましい顔つきとは別人のような、穏やかで落ち着いた高貴な顔つきです。

全体的に静かな、しかし品のある舞がしばらく続いた後、老人に促され女性貴族は舞台中央の幕の中へと姿を消しました。2人が引っ込むと、2人が中に入って行った幕の美しさが改めて際立ち、舞台全体の高貴な雰囲気を一層引き立てています。また、舞台下手側の三味線・お囃子部隊に目をやると、彼らの頭上には「御祭禮(ごさいれい)」と書かれた提灯がいくつか掲げられています。この演目は、祭で賑わう浅草を舞台に、祭礼の山車に飾られた人形が踊り出すという趣向の舞踊劇だそうです。
そして、登場した女性貴族と老人も、ただの女性貴族と老人ではなく、(西暦169年生まれ、江戸時代まで卑弥呼だと考えられていた)神功皇后と、その老臣だったようです。2人が戦物語や花の話を語り合うというシーンだったことを後ほど確認しました。この2人も、祭礼の山車の人形という設定だったのです。

場面は一転、海が背景の舞台に変わり、ちょんまげ頭で庶民的な格好をした男性2人が小舟に乗って登場しました。先ほどまで神功皇后と老臣だった役者2人が、ガラリと雰囲気を変えて再登場です。先ほどまでは神功皇后と老臣と対照的な格好だった2人が、同じ格好で動きもシンクロしています。おどけたような、脚を大きく上下させる激し目の動きです。個人的な話ですが高校生の頃日本舞踊を習っていた際に踊った道化師の曲の振り付けを彷彿とさせるものがありました。

それにしても2人の役者が同じ格好・同じ動きをしていると、それぞれの特徴がよくわかります。小柄な方は、尾上松也よりも老けて見え、ベテラン感があります。松也に比べ動きにハリがありきめ細かいように感じられます。双眼鏡で覗き込むと顔に見覚えがありましたが誰なのか、鑑賞中は思い出すことができませんでした…松也の方は小柄な方の役者よりも若いからか全体的に肉付きがよく、動きは少々粗いが勢いがあります。

やがて、天井から何やら漢字一文字が書かれ、雲の形をしたパネルが2つ登場しました。当初は舞台の中で空に位置する高さにありましたが、やがて役者2人の背の高さまで降りてきました。雲に書かれていた漢字の部分が2人の顔に仮面のようにはりつけられ、漢字の部分を接着部として顔にその雲のパネルをつけたまま2人は舞い始めました。後ほど確認すると、この雲に書かれた漢字は「善」と「悪」で、善玉と悪玉を表しており、このシーンは川沿いで踊る2人の漁師に善玉と悪玉が取り憑いて軽快に踊る、というシーンだったようです。このシーンも、神功皇后と老臣のシーン同様、祭礼の山車の上での出来事という設定です。やがて、松也演じる「善玉」に取り憑かれた方の漁師が小舟に乗って舞台から消え、もう1人、「悪玉」に取り憑かれた方の漁師が口惜しそうに見送り、このシーンは幕を閉じます。

ここまで書いたところでそれなりの量になってしまったので、今回はここまでとし、
次回、演目の後半について描いていきます。松也でないもう1人の、小柄な方の役者が誰なのか、鑑賞後に分かったのでそれもネタバラシをします。歌舞伎ファンじゃなくともおそらく知っている、有名なあの人だったのです・・・!