20220123_歌舞伎鑑賞日記! おめでたい舞と初笑いの演目Part1

ちょうど約一週間前の1月17日(月)、有給を取って、新年明けて初めての歌舞伎鑑賞に歌舞伎座へと出かけました。今回はとあるご縁で、無料で一階の13列目から見ることができ大満足でした!

 

1階席は、2階や3階に比べてより多くのお客さんのことも見えるので、そして新春大歌舞伎ということもあってか、着物のお客さんもいつもより多く目につきました。

また、感染症対策に関しては、引き続き、入場時に検温と消毒があり、チケットも係の方に見せて自分で切り離すスタイルでした。私が前回鑑賞した際と変わっていた点は、大きく2点ありました。1点目は4部制から3部制になっていたことです。元来、歌舞伎は基本的に午前の部と午後の部の2部制で、一度入るととても長いので途中で幕の内弁当を買ったりして席でご飯を食べるものですが、コロナ禍になってから、2部制の2倍、4部制にすることで、一幕を短く(その分チケットも安く)して頻繁にお客さん・演者・スタッフを入れ替える形を取っていました。しばらくその4部制が続き、私が前回行った際も4部制でしたが、今回は1つ減って3部制となっていました。

 

今回私が見た演目は、
春の寿「三番叟」「萬歳」

と、

邯鄲枕物語「艪清の夢」
でした。

 

まずは春の寿「三番叟」から。幕が開くと同時に、ずらりと、唄方、三味線、お囃子の皆さんが舞台いっぱいに並ばれ、黒い布で鼻〜口元を覆って演奏されていました。

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イメージ。今回の演目のものではありません。ネット記事にあった画像を拝借

この布は感染予防のためのマスク代わりとは言え、元からあったもの、衣装の一部のように自然に馴染み、それもまた粋でした。実際は、上の写真以上に多くの人、約15人ほどが舞台いっぱいに並ばれ、全員がこの黒いマスクをしているとなるとなかなか圧巻でした。

 

いよいよ三人の登場人物が舞台上に現れました。舞台中央の大きな「セリ」が上下にゆっくりと動いてそこに三人とも乗って同時の登場でした。劇場内は期待の拍手に包まれます。

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左より、三番叟=中村芝翫さん、翁=中村梅玉さん、千歳=中村魁春さん ©松竹(株)

ちなみに、タイトルにもなっている「三番叟」役は、昨年の大河ドラマ「青天を衝け」にて、主人公の渋沢栄一と対峙した岩崎弥太郎役を熱演した中村芝翫さんです。

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中村芝翫さん as 岩崎弥太郎 in 2021NHK大河ドラマ「青天を衝け」

ドラマ内では悪役のような立ち位置で、どす黒い、圧倒的な存在感を放っていましたが、今回の舞台上でも、その岩崎弥太郎役に勝るとも劣らない存在感で魅せていました。今回は舞で雅に、堂々と。

 

その中村芝翫さんは56歳。写真中央の翁役の中村梅玉さんは75歳、そして写真右の千歳役中村魁春さんも74歳。あの厳かな舞は、たとえ若くてもかなり足腰に負担がかかるはずですが、見事に演じられており頭が上がりません。

歌舞伎座が出していた演目説明にもあった通り「翁と千歳が格調高く荘重に舞うと、三番叟は躍動感にあふれ」、写真にもある通り、三者三様の衣装の色合いで、観客をうっとりさせました。天下泰平と五穀豊穣を祈った舞だということです。新年にふさわしい素敵な舞で、見ているだけで縁起が良いような、清々しい心持ちになりました。

 

続いては「萬歳」。

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左より、才造役の中村鴈治郎さん、萬歳役の中村又五郎さん ©松竹(株)

梅の花でしょうか、美しい背景の絵の前で、お揃いの衣装・扇子で少しひょうきんさも感じる愉快な動きで「福を招く」舞は、心をポッと明るく灯してくれました。

 

ここで20分の休憩を挟み、第二部へ。松本幸四郎さん主演の、邯鄲枕物語「艪清の夢」です。松本幸四郎さんは松たか子さんのお兄さんですね。プログラムに「初笑いにぴったりの」と書かれていたので、どんなコミカルな物語が始まるんだろうとワクワクしながら幕開けを迎えました。舞台が明るくなると、江戸時代の茶屋のセットが現れました。前半の演目とは全く違う雰囲気です。

 

舞台は上野池の端。今も同じ一帯、不忍池まわりは「池之端」という地名なので、イメージもしやすく親近感が湧きます。確かによく見ると、舞台上の家屋の向こうには不忍池と蓮があるように見える背景の絵で、間違いなくここは上野です。そこで待合茶屋を営む六右衛門(演じるは中村嘉六さん71歳)などが茶屋の周りでせっせと動きまわっています。

 

そこへ花道から愉快に登場したのが松本幸四郎さん演じる清吉と、その女房おちょう(演じるは片岡孝太郎さん)です。清吉は船の艪(ろ)を作る江戸の職人である艪屋で、借金を抱え、この茶屋に居候させてもらうべく引っ越してきます。
何がそんなに楽しいんだというほどニコニコしながら登場する様子から、主人公の面白キャラぶりがなんとなく想像されます。夫がそんなにニコニコする横で女房はくたくたに疲れた顔をして、二人とも引越しの荷物をいっぱいに抱えてよちよち歩いてくる様子を見ているだけで滑稽です。観客からは、登場への拍手とともに、少し笑いのどよめきもあったように思いました。

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大荷物を抱え登場する主人公(同演目を2014年に明治座で鑑賞された方のブログより拝借)

登場直後、花道で、夫婦漫才のようなこんなやり取りも。女房おちょうが「あとどれくらい?重くてもう限界」と絞り出し、清吉が「まだまだだ」と答え、おちょうがうなだれると、「うそうそ、実はもうすぐそこだ」と清吉が励まし、おちょうが「もう、冗談はよしてくださいな」と返す、こういった主旨のテンポ良いやり取りで観客は最初から釘付けでした。

 

そんな二人を茶屋の主人、六右衛門は迎え入れ、夫婦は大きな荷物を置くと、清吉は六右衛門に語り始めます。聖徳太子が描いたという七福神の画賛を宝としていたが、なくしてしまい、ずっと探していて、ついに質屋で見つけたが、買い戻すお金が無いため困っていると打ち明けるのです。

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聖徳太子が描いたという七福神の画賛。©︎松竹

そこでお金を工面するために、夫婦に家を貸す待合茶屋の六右衛門は、茶屋の客を騙してお金を取ろうと、夫婦に提案します。清吉の女房おちょうに人妻であることを隠して接待をさせ、客の侍をいい気にさせて騙そうというのです。

 

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左より、女房おちょう=片岡孝太郎さん、艪屋清吉=松本幸四郎さん、家主六右衛門=中村歌六さん ©︎松竹

早速、客の侍がやってきます。この侍は刀を刺して身なりも整っていますがなぜかバカ殿のお面のようなとても間抜けな顔↓をしておりいかにも騙されやすそうです

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こんな顔。こういう顔を見ると私はすぐ父を思い出します…

早速、おちょうが接待を始め、侍は「お前可愛いのう〜〜」とすぐデレデレになり、「結婚はしていないのか?」とすぐに詰め寄って異常な積極性を見せます。それを六右衛門と一緒に陰から顔をひょっこり出して覗いていた清吉は、見かねて「女房に手を出すなーー!」と飛び出して割って入ってしまいます。

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左より、女房おちょう=片岡孝太郎さん、客の侍の横島伴蔵=中村錦之助さん、(後方)左より、家主六右衛門=中村歌六さん、艪屋清吉=松本幸四郎さん(C)松竹

「人妻とは聞いてないぞ!」と侍は怒って逃げ帰ります。茶屋の主人六右衛門は、「お前、あそこで出て行っちゃいかん」という風に、清吉をたしなめます。

疲れた清吉は横になり、女房が食事を準備する間にうとうとし始めるのですが・・・さあ、ここから清吉の夢の中の世界になります。まるでプーさんのようですね笑 天然なキャラクターも似てますし…
気がつけばここまでで相当長文になってしまいました。続きは来週あたり書きますね!