20220223_歌舞伎鑑賞日記! おめでたい舞と初笑いの演目Part2

前回は、松本幸四郎さん主演の、邯鄲枕物語「艪清の夢」の途中までお伝えしました。船の艪(ろ)を作る江戸の職人である主人公の清吉は、借金取りに追われて、女房と一緒に、池之端の茶屋に居候させてもらうべく引っ越してきます。

清吉は、宝物だった聖徳太子作の画賛を買い戻すためにお金が欲しいが金が無く困っていると茶屋の店主に話し、店主の計らいで、早速その金を工面すべく茶屋の客を騙すことになります。やって来た客の侍を清吉の女房に人妻であることを隠して接待をさせ、客をいい気にさせて騙そうとするのですが、見かねた清吉が「女房に手を出すなーー!」と飛び出して割って入り、客は怒って帰ってしまって金の工面の計画は台無しに。そんなちょっと間抜けな清吉が、この一騒動の後にうたた寝をして、夢を見るのですが、その夢の中のシーンへと舞台が移り変わります。本日はここから。

 

夢の中の清吉は、立派なお屋敷で、何人もの女中さん?おもてなしの芸者さん?とにかくきらびやかな女性たちに囲まれていかにもお金持ちな様子。押し入れの中には眩いばかりの金もわんさか入っています。
(後で調べたところによると、そこは大坂の豪商の屋敷で、清吉は見張り役を命じられ、一年間の小遣いとして)十二万両という大金を与えられます。

そこから月に一万両使うようにとの命令に従い、清吉は早速、外に出ていくのですが、どうやら様子がおかしいのです。何を買おうとしても、お金を受け取ってもらえず、むしろお金をもらってばかりなのです。誰もがお金を欲しがらず、清吉に押し付けて来るようです。

 

清吉は、だんだん重い大金を持って歩くのに疲れて来て、とにかく金を使いたい、、とただその一心でとぼとぼ歩き続け、ついに溜まりかねて道端に金を置いていこうとします。するとすかさず、「捨て金番」という交番のような小屋から男が飛び出して来て、「こら!金を捨てるんでない!」と厳しく叱りつけます。清吉は、「はいはい」と言いながらも、男が小屋に入ると金を置いて逃げようとします。「だからダメだろ!!」と捨て金番の男はまた小屋から出て来ます。

 

他にも、半裸で踊る男が登場したり、(花道でドリフの髭ダンス!)

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盗賊唯九郎=中村錦之助さん(C)松竹

どこからとも無く(今年の干支の)虎が突然現れたりと、さすが夢の中の世界。もうめちゃくちゃです笑 虎はおそらく前足と後ろ足で二人の人が中に入って動かしているのでしょうか、とてもアクロバティックでダイナミックな動きをします。前足と後ろ足、バラバラで自由自在に動いているようで大事なところはシンクロしており、プロの技を感じました。

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艪屋清吉=松本幸四郎さん(C)松竹
夢の中の清吉の着物は黄金。あり得ないくらい立派な身なりです

そんな中、お餅屋さんと出会います。「あ〜やっと金が使える!」と大喜びの清吉。ぜんざいにして餅をいただこうと言い、餅売りの2人にもご馳走する、と金が使いたくて仕方ない清吉は太っ腹です。
三人並んでぜんざいを食べ、餅をのばすシーンも会場の笑いを誘っていました。
こんなにのびているお餅見たことがありません。しかも、一人、また一人と順番に最後は三人で一斉に、何度も何度も、もういいよってくらい餅を何度も引き伸ばすのです。

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左より、杵造=大谷廣太郎さん、お臼=中村壱太郎さん、艪屋清吉=松本幸四郎さん(C)松竹

清吉は、意気揚々と、お餅屋さんにお金を払おうとしますがこのお餅屋さんもどうしてもお金を受け取ってくれません。また仕方なくこっそりお金を置いて帰ろうとする清吉ですが、また「捨て金番」の男に咎められてそれもできません。本当に滑稽でした。

そんなヘンテコな夢から覚めた清吉は、茶屋の座敷で、自分の荷物を枕にして眠っていました。


その荷物を開けると、なんと、ずっと探していた、宝物だった聖徳太子作の画賛があるではありませんか!喜び勇んで画賛を観客にも広げて見せてくれましたが初夢に縁起のよい“七福神の宝船”が描かれていて、私も見ているだけで縁起が良い気がしました。

そこへ、清吉が寝落ちする前に一悶着あったあの「バカ面」のお侍さんが再び茶屋へやって来ます。そして清吉が広げた画賛を見て「オイ!それは俺のだぞ」と怒って取り返そうとします。侍は、前回茶屋を訪れた際に、自分の荷物と、清吉の引越しの荷物の一つを取り違えて持って帰ってしまっていたのでした。

そこで清吉は、「これは元々自分のものだから買い戻す」と言い、女房は「そんなお金ないでしょ!」と慌てますが、まだ寝ぼけている清吉は十二万両が押し入れの中にあった夢の中とあべこべになって、「押し入れに十二万両あるんだ」と意気揚々と押し入れを開けますが、もちろん現実にはどこにもそんな金ありません。

この後どうなったか、というと、なんと私としたことが忘れてしまいました。最後の顛末を忘れてしまうなんてあり得ないと自分でもびっくりです、、やはり記憶の新しいうちに書くべきですね…
最後どうなったか、もし知っている人がいましたら、教えてください笑

純粋に初笑いの演目として面白おかしく楽しむものなのだろうとは思いつつ、お金を「得る」ことばかりに囚われて、何にお金を使うのかを考えない世間の風潮を皮肉っていたのかな、というのが個人的な見解です。

金を得ること自体が目的にならぬように、そのお金を使ってどう人生を豊かに生きるのか考えるのを忘れちゃダメよというメッセージを勝手に受け取って、
真の意味で豊かな一年を過ごしたいなと思った次第でした。

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左から家主六右衛門=中村歌六さん、艪屋清吉=松本幸四郎さん、清吉女房おちょう=片岡孝太郎さん、横島伴蔵=中村錦之助さん(C)松竹