六月大歌舞伎午前の部_市川中車さんの渾身の演技と若手の活躍!

六月大歌舞伎、見てきました!


久しぶりに訪れた歌舞伎座は、あいにくの天気ながら、大入り満員、心なしか、若い人も多いように感じました。客足がすっかりコロナ前に戻っていることもさることながら、二部制になり、休憩も3回あって、なんだか懐かしく、嬉しい気分になりました。

何より、大向うが復活してたのが、感慨深く、テンションが上がりました。
やはり、「澤瀉屋!」「松嶋屋!」と、絶妙なタイミングで2-3階席左右から掛け声がかかると役者さんたちもより一層、気合が入るのではないでしょうか。

演目は、近松門左衛門の「傾城反魂香」、河竹黙阿弥の「児雷也」、清元節の「扇獅子」でした。

「傾城反魂香」は、生まれつき言葉の不自由な絵師の又平と、口の達者な女房の夫婦の絆に胸が熱く、ほっこりするお話でした。

又平は、市川中車さんが演じていましたが、前半の、師匠に認めてもらえない時の苦しい演技は、猿之助さんのことも思って・背負っての演技にどうしても感じられ、いつも以上に胸に迫るものがありました。中車さん、一時期出られなくなられてから私は初めてお目にかかったので、改めて、復活されてよかったと思いました。

後半の、明るくコミカルなシーンも含め表情の演技が、さすが、中車さんでした。

女房役は、もともと、猿之助さんの予定でしたが、代理で演じたのは、中村壱太郎さんでした。おしゃべりで世話好きの女房をとっても面白く可愛らしく演じられていて、若手役者さんなのに抜群の安定感で、一緒に行った母も絶賛していました。

又平の後輩弟子は、市川團子さんが演じていました。先月、明治座猿之助さんの代役を急遽務めて一躍話題になった市川團子さん。中車さんとの親子共演を見ることができ、感慨深いものでした。

二幕目は、師匠から認められたその後のお話でした。中村米吉さん演じるお姫様がさすが美しく、煌びやかかつ上品で本当にうっとりしました。又平が描いた大津絵の、藤娘や座頭が実際に飛び出してくる流れは見ていて飽きず楽しく、最高でした。若手役者さんたちの躍動を感じ、見ていてワクワクしました。

児雷也」は、中村芝翫さんと片岡孝太郎さんとの掛け合い、そして中村芝翫さんと長男の中村橋之助さんの共演が見ものでした。片岡孝太郎さんは、高校の修学旅行、京都の南座で初めて見た歌舞伎にも出演されていましたが、約12年前のその頃から変わらぬ美しさです。中村橋之助さんは、オオカミ?のような被り物を着用して登場され、とても勇ましかったです。ちなみに、中村芝翫さんの次男・福之助さんと歌之助さんは、「傾城反魂香」の二幕目で登場し、颯爽とした演技を見せていました。

(つまり「成駒屋3兄弟」勢揃いの午前の部でした!)

そしてこの演目には、蝦蟇も登場!その滑稽な可愛らしさ・不気味さと、中村芝翫さんの貫禄・迫力のコントラストが印象的でした。
そして、三味線と長唄の見せ場もあり、音の面でも、味わい深い演目でした。

照明も暗めで演目全体に漂う妖しい雰囲気が、クセになりそうでした。

最後の「扇獅子」は、一転、とても爽やかでパッと明るく華やかな演目でした。とはいえ、芸者さんたちが、獅子頭をかぶって、揃って頭を振る最後のシーンは圧巻。

1・2幕目「傾城反魂香」で女房役を好演した中村壱太郎さんが「センター」で存在感を放っていました。坂東彌十郎さんの一人息子・坂東新吾さんはお父さんに似て長身で、すらりとモデルのよう。踊りも優雅です。中村児太郎さんも同様にすらりと優雅でした。中村米吉さんはやはりこの演目でもとにかくたおやかで美しく、小柄な中村種之助さんはピンクの着物がよく似合い、走って登場するところも愛嬌たっぷりで可愛らしかったです。この5名が並んで獅子頭を振るシーンは、中村壱太郎さんは滑らかで柔らかで、坂東新吾さんは形を忠実に守っているような規則正しい動きで、中村種之助さんは一生懸命さが伝わってくるなど、5人それぞれの個性がそれぞれ表れていて見応えたっぷりでした。

雨の日だったので、傘やバッグで手が塞がって、現場では何も写真を撮っていないのが心残りです…!

歌舞伎座を出ると、天気は雨なのに心はとても晴れやかな気分になっていました。

市川中車さんの「覚悟」を感じさせる熱演や中村芝翫さんの貫禄でこちらまで気が引き締まり、片岡孝太郎さんや中村米吉さんの美しさに心清まり、若手役者さんたちの溌剌とした演技に元気をいただいて、充実の日曜日のひとときでした!